インターネット上のサイト、アプリのさまざまなところで表示されるWeb広告は、現代人の生活にとってなじみ深く、効果的な広告形態の一種です。
しかし、Web広告には様々な種類があるため、仕組みが複雑で理解しにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Web広告の出稿を検討中の企業のマーケティング担当者や広報の方に向け、代表的な10種類のWeb広告の特徴と仕組みについて分かりやすく解説していきます。自社のビジネスや商材にあった手法を選択し、効果的に広告運用するための参考としてご覧ください。
目次
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Web広告とは?基本的な仕組み
Web広告の基本的な仕組みは、あらかじめ広告を届けたい層を細かく設定した上で、その層に届く媒体・形態を選んで広告を出稿するというものです。具体的には、広告を表示させたいユーザーの年齢や性別、居住地域、検索履歴等まで設定してから広告を出すことができます。
また、掲載媒体や種類、予算や求める成果などの条件によって課金する仕組みを選べることや、費用を調整しやすこと、管理ツールを使ってリアルタイムで広告効果のデータを取得し、随時改善しながら運用可能な点も、Web広告ならではの仕組みだと言えるでしょう。
Web広告と「マス広告」の仕組みの違いは?
マス広告とは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4大媒体に出稿・掲載される広告のことです。
Web広告とマス広告の大きな違いは、ターゲティングの精度にあります。Web広告では、閲覧者の属性や行動履歴などのデータをもとに細かくターゲットを設定して特定の方たちに向けて広告を出すのに対し、マス広告は、より幅広い方向けに広告を届ける仕組みになっています。
また費用面においても、媒体や広告枠(広告を流す、または掲載する時間帯や場所、サイズ等)の条件ごとに掲載料金が決まっていて、基本的に運用中の変動がないという点において、Web広告とマス広告は大きく異なると覚えておきましょう。
Web広告に課金する仕組みは大きく8種類
Web広告の基本的な仕組みとマス広告との違いが理解できたら、ここからは、Web広告において広告費用が発生する仕組みについて見ていきましょう。
Web広告における課金の仕組みとしては、大きく以下の8種類が挙げられます。
クリック課金型(CPC)の仕組み
CPC(Cost Per Click)とも呼ばれるクリック課金型は、Web広告がクリックされた回数に応じて費用が発生する仕組みです。例えば、1クリック100円の広告を出稿し、広告に興味を持ったユーザーから100回クリックされた場合は、広告費は100円×100回=10,000円となります。
この方式のメリットは、広告の効果によって課金される仕組みであるため、無駄な広告費を抑えられるところです。一方で、クリック単価が高騰すると広告費用全体が高くなるため、費用対効果が悪化するというデメリットもあります。
費用対効果を高めながら運用していくには、キーワード選定や広告内容を工夫し、クリック率と単価を適正に保つことが求められるでしょう。
インプレッション課金型(CPM)の仕組み
CPM(Cost Per Mille)とも呼ばれるインプレッション課金型は、Web広告が1,000回表示されるごとに課金される仕組みです。例えば、CPMが100円の広告を1万回表示すると、広告費は100円×10=1,000円となります。
この方式は、広告の「露出」に重点を置いているため、ブランディングや認知度向上を目的とした広告に適しています。ただし、広告がクリックされなくても課金されるため、クリック率が低い場合は費用対効果が悪化する可能性も。費用対効果を向上させるには、広告の内容はもちろん、配信先や表示位置を工夫し、全体の質を高めることが大切になってくるでしょう。
エンゲージメント課金型(CPE)の仕組み
CPE(Cost per engagement)の指標で知られるエンゲージメント課金型とは、ユーザーがWeb広告に対して特定のアクションを起こした場合に課金される仕組みです。例えば、動画広告の再生完了や、広告のシェア、コメント、いいねなどに応じて課金されます。
この方式は、ユーザーの能動的な関与を促すことができるため、広告の印象に残りやすいというメリットがあります。一方で、エンゲージメントを獲得するためには、魅力的で印象的な広告クリエイティブが必要不可欠になります。ユーザーの心を掴むような、斬新なアイデアやストーリー性のある広告を制作することが、この課金方式における成功の鍵となるでしょう。
成果報酬型(CPA/CPI)の仕組み
エンゲージメント課金型に近い課金の仕組みであり、CPA(Cost Per Action)やCPI(Cost Per Install)の指標で知られるのが、成果報酬型の仕組みです。成果報酬型の課金方式では、Web広告経由で発生した成果(申込み、購入、会員登録など)に応じて、広告費用が決まります。
この方式の特徴は、広告主にとってリスクが少なく費用対効果が明確なところ、また売上拡大を目指すのに適した手法であることです。一方で、成果が出るまでに時間がかかったり、広告の質が悪いと成果が出にくいという側面もあります。
この課金の仕組みを利用して広告効果を獲得するには、広告の内容や、広告をクリックしたユーザーに表示するLP(ランディングページ)を最適化するとともに、ターゲティングの精度を高めることも必要になってくるでしょう。
配信数型の仕組み
配信数型は、メールマガジン(メルマガ)等と一緒に送る広告の配信数に応じて課金される仕組みです。配信単価×配信数で広告費用を計算するのが一般的で、例えば1通当たり10円の配信単価で1,000通配信する契約の場合は、10円×1,000通=10,000円の予算が必要になります。
この方式は、広告の到達率が明確で予算管理がしやすいですが、一方で広告効果については、配信先のターゲットの質に大きく左右されます。既存顧客等、特に自社の商品・サービスに関心が高い方を狙って広告を配信したいという方には、おすすめの手法と言えるでしょう。
広告視聴単価型(CPV)の仕組み
CPV(Cost Per View)とも呼ばれる広告視聴単価型とは、ユーザーが広告動画を最後まで、または一定時間視聴した回数に応じて広告費が課金される仕組みのことです。主にyoutubeなどの動画配信サイトやSNS等で流れる動画広告を配信する際に適用される課金方式となります。
この課金方式における注意点は、広告の出稿・運用費用とは別に、動画広告の制作コストがかかるところ。広告の費用対効果を高めるには、動画広告そのものの質を高めるのが有効とされていますが、質の高い動画を作るにはある程度の費用が必要になると理解しておきましょう。
掲載期間保証型(CPD)の仕組み
CPD(Cost Per Day)とも呼ばれる掲載期間保証型は、Web広告を一定期間掲載することを保証する事に対して、費用を支払う仕組みです。例えば、1ヶ月間の掲載で10万円の広告を出稿した場合、その期間中は広告が掲載され続けます。
主に、Webサイトやアプリ上の広告枠に広告を出稿する純広告、バナー広告、ディスプレイ広告などと呼ばれるものに適用される課金方式であり、規定の金額を支払えば、一定期間の露出が保証されるのが大きなメリットだと言えます。ただ一方で、広告の効果が不透明であること、また広告効果に関わらず一定の予算が必要になる点は、デメリットと言えるでしょう。
ページビュー保証型の仕組み
ページビュー保証型は、広告の表示回数(PV)を保証する仕組みです。例えば、月間10万PVを保証する広告枠を1ヶ月10万円で契約した場合、契約期間中に10万回Web広告が表示されます。また、もしも期間中に契約PVに達しなかった場合は、Web広告の掲載期間を延長して対応するのが一般的です。
この方式では、サイト等のトラフィック数に応じたWeb広告の安定的な露出が見込めますが、その効果やクリック数は保証されません。そのため、商品の購入や会員登録等の成果よりも、まずは認知度向上を目的にWeb広告を出したいという方に、おすすめの課金方式だと言えるでしょう。
代表的なWeb広告10選の仕組みと特徴
Web広告は、掲載媒体や形式、表示方法、費用発生の仕組み等により、さまざまな種類に分けられます。そこでここからは、代表的なWeb広告10種類の仕組みと特徴について、それぞれの広告で採用されることが多い課金方式等の情報と一緒に確認していきましょう。
リスティング広告
リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを利用した際に、キーワードの検索結果として表示されるテキスト広告のことです。検索連動型広告とも呼ばれ、検索結果の上部や下部に「スポンサー」の文字とともに、検索キーワードと連動したものが表示されます。
広告主は入札によって広告の表示順位を決定し、ユーザーがクリックした場合にのみ広告費用が発生するクリック課金型の仕組みが一般的です。リスティング広告は、高い費用対効果と柔軟な運用が可能な反面、競合他社との入札合戦になると広告費が膨らむことも。効果的に運用するには、適切なキーワード選定と入札単価の調整、広告文の最適化などが重要になります。
リターゲティング広告(リマーケティング広告)
リマーケティング広告やリタゲ広告とも呼ばれるリターゲティング広告とは、過去にあなたのWebサイトを訪問したことのあるユーザーに対して、再度広告を表示する仕組みです。例えば、ECサイトで商品を閲覧したものの購入に至らなかったユーザーに、その商品の広告を別のサイトで表示することで、購入を促すことができます。
既に自社や商材・サービスに魅力を感じている方に広告を配信するため、高い効果が見込める手法ですが、あまりに高頻度で広告を表示すると、ユーザーに不快感や不信感を抱かせてしまう恐れもあります。配信頻度や期間が適切になるように、内容や設定を決める必要があると覚えておきましょう。
なおリターゲティング広告の費用は、クリック課金型またはインプレッション課金型が一般的です。
純広告(バナー広告)
ディスプレイ広告とも呼ばれる純広告は、Webサイトやアプリの広告枠に表示されるWeb広告です。広告枠のサイズや配置、掲載期間等によって料金が決定される仕組みになっており、費用の発生方式としては、主にインプレッション課金型とクリック課金型、また掲載期間保証型が採用されています。
ディスプレイ広告の特徴としては、一旦掲載してしまうと運用の手間が少なくて済むこと、また自社や商材と相性の良い場所にさえ掲載できれば、高い広告効果が見込める点が挙げられるでしょう。
記事広告(タイアップ広告)
記事広告(タイアップ広告)は、広告主の商品やサービスについて、Webメディア等において記事形式で紹介するWeb広告の手法です。掲載先のWebメディアやポータルサイト等のユーザーに対し、自社の商品やサービスの魅力について書いた記事を読んでもらう形式であるため、読者から信頼感や好感を持って受け入れてもらいやすいという特徴があります。
ただし、記事広告で高い効果を得るには、掲載媒体と自社との相性が良いこと(ターゲット層が共通していること)と、良質な記事制作のためにある程度の時間的・経済的コストをかけることが必須条件となります。また課金方式は、提携する企業・媒体によって異なるため、この点にも注意が必要です。
ネイティブ広告
ネイティブ広告(ネイティブアド)は、Webサイトやアプリの内容に溶け込むように表示される広告で、ユーザーにとって違和感のない形で商品やサービスを訴求できるのが特徴です。例えば、ニュースサイトの記事一覧に、広告主の記事が「PR」や「広告」の文字とともに通常の記事と同じデザインで表示されるインフィード型広告などが、ネイティブアドに当たります。
この広告手法は、広告と気づかれにくい分、ユーザーから注目やアクセスを集めやすいところが魅力ですが、一方で、広告だと思わずクリックしたユーザーが「騙された」と感じ、印象を悪くしてしまうリスクもあります。掲載するサイト、広告枠のデザインとの調和を保ちつつも広告であることをわかりやすくするなど、ユーザーに配慮した広告の制作が求められます。
なおネイティブアドの課金方式も、提携先企業やメディアによってさまざまです。予算設定をする際には、必ず事前に課金方式と費用額についてしっかり確認するようにしましょう。
リワード広告
リワード広告は、Web広告の視聴やアプリのインストールなどのアクションをすることで、ユーザー側がアイテムやポイント等のリワード(報酬)を獲得できる仕組みになっています。
この広告手法は、特に短期間でアプリのインストール数を向上させる等の成果を上げたい場合に効果的ですが、報酬目当てのユーザーが増えると、アプリの体験が損なわれる可能性もあるため注意しましょう。なおリワード広告の課金方式としては、成果報酬型が一般的です。
動画広告
動画広告は、youtubeなどの動画プラットフォームやWebサイト上で表示される動画形式のWeb広告の総称です。動画の再生前や途中に挿入されるインストリーム広告、プラットフォームの広告枠内で再生されるインバナー広告などの種類があり、視覚と聴覚の両方から商品・サービスの魅力を効果的に訴求できるという強みがあります。
ただ一方で、テキストメインのWeb広告に比べて制作コストがかかりますし、動画の長さや表示頻度によってはユーザーから反感を買うこともあるため、運用する際には注意しましょう。
課金方式は、広告視聴単価型がメインですが、媒体によって期間固定型やインプレッション課金型の方式を採用しているところもあります。
アフィリエイト広告
アフィリエイト広告は、Webサイトやブログなどに広告主の商品やサービスを紹介するリンクを掲載し、そこから発生した売上等のCV(コンバージョン)に成果報酬を支払う仕組みです。
サイトやブログを運営する個人のアフィリエイターの他、近年ではASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)と呼ばれるプロバイダーと契約して、Web広告の掲載場所を提供してもらうという方法も主流となってきています。
アフィリエイト広告は、広告主が設定する成果があった場合のみ費用が発生するため、費用対効果が高い手法だと言えます。ただ一方で、不適切な商品紹介や誇大表現などのリスクもはらんでいるため、高い広告効果を得るには、信頼できるアフィリエイターとのパートナーシップ構築と適切な成果報酬の設定が肝になるでしょう。
アドネットワーク広告
アドネットワーク広告とは、アドネットワーク(Ad Network)と呼ばれる広告配信の仕組みを活用したWeb広告の総称です。アドネットワークにおいて広告出稿の手続きをすれば、複数のWebサイトの広告枠(主に純広告枠)に対して、一括でWeb広告を配信することができます。
この広告手法の強みは、出稿と運用の手間を大幅に省けること、そして潜在層を含む幅広い方にリーチできるところにあります。一方で、配信サイトの質や獲得率によっては、ブランドイメージを損ねたり、クリック単価が高額になることもあるため注意が必要です。
なお課金方式はクリック課金、またはインプレッション課金のどちらかが多いでしょう。
メール広告
メール広告は、広告主が持つ顧客リストをもとに、商品やサービスに関する広告を掲載したメールやLINEを送信する手法です。基本的に既存顧客に向けて配信するWeb広告であるため、ターゲティングの精度が高いところが最大の特徴と言えます。
課金方式は配信数型が一般的で、広告の目的によって配信件数を絞り込めば、コストの調整もしやすくなるでしょう。ただし、ユーザーにメールを確実に開いてもらえるようにするには、ユーザーの興味関心に合わせたタイトル・内容のメールと広告文を作成する必要があります。
仕組みから考えるWeb広告のメリット・デメリット
Web広告には、その多様で柔軟な仕組みゆえのメリット・デメリットがあります。そこで以下からは、Web広告全体におけるメリットとデメリットについて、それぞれ紹介していきます。
Web広告のメリット
ここまでに見てきたように、Web広告はあらかじめ広告を届けたい層を設定した上で、少額・短期間で始めることができ、運用しながら効果測定と改善ができる仕組みになっています。
これらのポイントは、はじめにまとまった費用を用意する必要があり、かつ一旦広告を出せば簡単に修正や改善ができないマス広告にはない大きなメリットだと言えるでしょう。
Web広告のデメリット
対して、Web広告のデメリットとしては、効果的に運用するには継続的な分析・改善ができるだけの知識、そして多角的な視点で物事を考える能力が不可欠であることが挙げられます。また限られた予算で成果を上げるには、クリック単価が高騰するキーワードであれば課金方式や広告の種類・媒体を適切なものに変えるなどの管理能力、判断能力も必要になるでしょう。
これまであまりWeb関連の業務に携わってこなかったという方や、今回初めてWeb広告の運用に取り組むという企業の場合は、いきなりWeb広告で成果を出すのは難しいかもしれません。
Web広告の運用効果アップのためにできること
最後に、設定した予算の中でWeb広告の運用効果を少しでも高めるためにできることを、広告の運用開始前・運用中の段階に分けて紹介していきます。Web広告の仕組みを理解し、これから制作と運用に挑んでいく上での参考として、ぜひご確認ください。
Web広告の運用開始前にやっておくべきこと
Web広告の運用効果を高めるために、事前に準備できることとしては以下が挙げられます。
- 自社がWeb広告を出す目的、広告を届けたいターゲットを明確にする
- 自社や自社の商材、サービスの強み、知ってほしい魅力を洗い出しておく
- 自社の規模や売りたいものの売上見込み等をもとに、現実的に予算設定する
- 自社の状況、ターゲットに合った広告の種類・媒体・掲載期間・課金方式を選ぶ
- 広告からの遷移先として、LPやサイトの商品紹介ページも最適化させておく
Web広告の運用中に継続的してやるべきこと
Web広告の運用効果を高めるために、広告の運用中にできることとしては、以下が挙げられるでしょう。
- 広告から得られる効果、ユーザーに関する数値情報を記録しておく
- 短期的な目標数値である「KPI」を設定し、こまめに広告の効果測定を行う
- 効果測定の結果、目標としている効果を得られていないとわかった場合は、すぐにその広告を停止、または内容を改善するか、掲載媒体や時間を変える等の対策を取る
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