主に企業と取引をするBtoBビジネスである製造業は、一般消費者に直接自社の商品やサービスを販売・提供するBtoCビジネスの業種に比べて、マーケティングが難しいとされています。
そこで今回は、製造業を営む中で「マーケティングで自社の新規顧客獲得や売上アップを目指したい」とお考えの方に向けて、BtoBマーケティングの基本や製造業界の課題を解説。
併せて、製造業におけるマーケティングの基本的なステップや成功のポイント、おすすめの施策についても、オフライン・オンラインの手法に分けて計8つ紹介していきます。
目次
マーケティングとは?製造業において期待される役割
まずはマーケティングとは何か、製造業界においての役割や重要性と一緒に、改めて確認していきましょう。
マーケティングとは、端的に表すと「製品・商品が売れる仕組みを作ること」。具体的には、顧客のニーズに寄り添い、自社のターゲットとなるお客様の需要に合った商品を企画・開発して、広告・宣伝や販売まで行なうことと言えるでしょう。
製造業におけるマーケティングの重要性
国内外からさまざまな商品・サービスが提供され、インターネットも広く普及した現代では、企業・消費者ともに非常に幅広い選択肢の中から購入するものを選べるようになりました。
オフライン・オンラインを問わず情報が溢れ、どんどん更新されていく状況では「ただ良いものを作った」だけでは、見つけてもらうことも買ってもらうことも難しいでしょう。そんな中で企業が生き残るには、顧客のニーズを把握した上で需要のある層に製品の情報を届け、購入してもらえるようにアプローチしていく必要があるのです。
顧客となる可能性のある企業へ製品の情報を届けるため、また、新規顧客との接点作りのためにもマーケティング施策が重要になると理解しておきましょう。
製造業界でのマーケティングの課題4つ
BtoBビジネスであり、技術の独自性が重んじられてきた製造業界でマーケティングを行うには、業界ならではの難しさや課題があります。具体的には、以下4つが挙げられるでしょう。
課題①BtoBなので顧客ニーズの把握が難しい
BtoCビジネスにおいての顧客とは、原則自社の商品やサービスを購入・使用する方本人です。
対して、製造業のようなBtoBビジネスでは、以下3つの立場の方すべてが自社の顧客に該当すると考えられるでしょう。
- 商品を購入する方(取引先企業の窓口となる方)
- 商品購入の決裁権を持つ方(取り引き先企業の決裁権を持つ方)
- 購入した製品の使用者(自社製品を直接使用される方)
マーケティングの施策を行う際は、自社にとっての顧客にどのような需要があるのか、つまり顧客のニーズを把握した上で戦略を立てていく必要があります。BtoBビジネスである製造業では、自社の顧客である商品の購入者・購入の決裁者・使用者の三者それぞれのニーズを把握する必要があるため、BtoCの業種に比べ、顧客ニーズを捉えにくいと言えるでしょう。
課題②マーケティングの専門人材が不足しがち
一般的にマーケティングを成功させるには、後述するような各種の分析と戦略の立案、そして継続的な施策の実施・改善が欠かせません。しかし製造業界においては、製品の企画や開発、管理、販売、事務等に携わる方がマーケティング担当を兼務しているケースが多く、マーケティングに特化した専門の部署や担当者を配置する企業は、まだまだ少ない傾向にあります。
また製造業では、昔からお付き合いのあるお得意先様との取り引きを優先したり、対面営業を重視する傾向も強いです。そうなると、必然的に新規顧客の獲得や売上アップのためのマーケティングにリソースを割くことが難しくなり、専門知識を持つ人材の確保や育成に注力できない、必要性を感じないという事態も起こりやすくなるでしょう。
関連記事:営業とマーケティングの違いとは?収益アップにつながる連携強化対策!
課題③情報発信に慎重な風潮がある
製造業において、各社の企業努力によって生み出され、数百年単位の時間をかけて磨き上げられることもある技術は「会社の宝物」であり「命そのもの」。そのため製造業界では、自社の生命線である技術の漏洩を防ぐために、細心の注意を払って慎重に情報を発信してきました。
このような経緯から、業界全体に情報発信を懐疑的に考える風潮があるため、他業種に比べ製造業ではマーケティングの考え方や施策が浸透しにくいという現状があります。
課題④Webマーケティングの効果に懐疑的な傾向も
製造業者の多くは、ほとんどの一般消費者が知らないニッチな製品を製造・販売しています。
マーケティングの手法には、大きくオフラインで行うものとオンラインで行うデジタルマーケティングの2つがあり、後者ではインターネット検索を利用した施策も行うことになります。
しかし、製造業で扱うニッチな製品に関するネット上での検索回数は、BtoC商材に比べ少ないと言わざるをえません。
そのため製造業者の中には、Webを活用することを前提としたマーケティング施策に懐疑的であったり、大きな期待をかけられないと考える方も少なくないのです。
製造業のマーケティングを成功へ!ポイントは?
ここまでに見てきた課題を踏まえ、製造業でのマーケティングを成功させるには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。そこで以下からは、製造業のマーケティングを成功させるためのコツを、4つのポイントに分けて紹介していきます。
部署間での連携体制を整える
自社で企画・製造する製品の魅力を最もよく知るのは、実際に製品の企画や開発、製造を担当した方たちです。そのためマーケティングという営業活動を成功させるには、製品をよく知る担当者と、製品の魅力を分かりやすく伝えるマーケティング担当者との連携が欠かせません。
マーケティング担当と製品の企画・開発・製造部門の連携体制を整えること、スムーズに製品情報が交換できる環境を作ることこそ、マーケティング施策成功の第一歩だと考えましょう。
顧客ニーズをしっかりと意識する
BtoBビジネスの顧客である「商品の購入者・購入の決裁者・使用者」それぞれのニーズを正確に把握することも、製造業でのマーケティング施策を成功させるために欠かせない要素です。
既存のお客様との商談・打ち合わせの際はもちろん、イベントや展示会で見聞きしたことや、インターネット上から収集できる最新の情報をもとに、顧客のニーズを理解しましょう。
短期的・長期的目標を明確にする
マーケティング施策は、明確な目標をもとにPDCAサイクルを回し、継続的に実施してこそ成果が得られるものです。そのためマーケティングを行うには、具体的な期間・数値で短期的な中間目標である「KPI」、長期的な最終目標である「KGI」の両方を設定しなければなりません。
KPIとは | 「Key Performance Indicator」の略で、重要業績評価指数や重要目標達成指数と訳される。KGIを達成するための中間目標のこと。 |
KGIとは | 「Key Goal Indicator」の略で、重要目標達成指標等と訳される。KPIの達成を経て、最終的に達成を目指す目標のこと。 |
例えば、実行するマーケティング施策を通して「毎月10件の問い合わせを受け(KPI)、半年後には3件以上の新規顧客獲得を目指す(KGI)」のように、目標を設定すると良いでしょう。
Webマーケティングにも取り組む
情報発信への抵抗感やWebを使ったマーケティングへの期待感の低さから、これまで製造業界では、主に対面での営業や展示会に出店する等のマーケティング手法がとられてきました。
しかし、自社の顧客となり得る企業に、オンラインでのリサーチに重きを置く企業がいないとは言い切れません。オフラインのマーケティング施策だけにこだわっていると、オンラインから獲得できるかもしれない新規顧客との接点を、みすみす逃すことにもなり兼ねないのです。
オフラインとオンラインの手法を掛け合わせ、さまざまな経路で複数のターゲット層に対して施策を打つ方が、効率よく顧客層の拡大を狙えるというもの。自社の状況や目標に合わせ、製造業でもオフラインマーケティングとWebマーケティングをバランスよく取り入れましょう。
製造業マーケティングのための「基本の6ステップ」
ここからは、製造業のマーケティング施策を実行するための基本的なプロセスについて、6つの段階に分けて紹介していきます。自社のマーケティング戦略を具体的に考えるために、まずはそれぞれのステップに従い状況やターゲット、効果的な施策の打ち方を確認してみましょう。
ステップ①環境を分析する
はじめに、自社を取り巻く外部・内部の環境について分析していきます。具体的には、まず以下のポイントに着目して外部環境を分析して、競合他社と自社と比較した時に「差別化できるポイント」を探ると良いでしょう。
外部環境を分析する際のポイント
- 業界の市場規模、成長率はどのくらいか
- 業界消費者の一般的なニーズ、平均購入額、購買決定プロセス、購買決定者はどうか
- 競合他社の製品・サービスの強み、弱み
- 競合他社のパフォーマンス(売上高や市場シェア、利益、顧客数等)はどうか
外部環境についての分析が終わったら、次は、自社ならではの強みを見つけ出すために以下のポイントに沿って経営資源、企業活動等の内部環境について探っていきます。
内部環境を分析する際のポイント
- 売上高、収益性
- 市場シェア
- ブランドイメージ
- 技術力
- 組織スキル
- 人的資源
ステップ②市場(=顧客層)を区分けする
環境の分析が終わったら、自社の顧客層について理解するために、既存顧客をさまざまな属性ごとに区分けしていきます。
なお製造業のようなBtoB事業では、以下のような属性を基準に分けるケースが多いでしょう。
- 購買者が何を重視しているか
- 購買決定者の役職等
- 顧客の状態
- 創業からの年数
- 経営者層の状態
- 購買の方針
- 注文の規模
- リスクへの態度
ステップ③ターゲットを明確にする
市場・顧客の情報をある程度分類できたら、自社製品と相性の良い顧客層を探っていきます。これは自社の顧客となり得る層、つまりマーケティングの際にターゲットとすべき顧客層を明確にするための作業であり、ターゲットの明確化またはターゲティングとも呼ばれています。
ステップ④自社の差別化ポイントを探す
続いて、自社の製品や情報に他社と差別化できる要素がないか考えていきましょう。値段、質、納品までの期間や技術等、自社や自社製品ならではの売りや強みの中から、ターゲットとする顧客層に響く要素を探してみてください。
ステップ⑤具体的な施策を考える
ひと通りの分析が完了したら、いよいよマーケティング施策の内容について具体的に検討していきます。企業と消費者、どちらかの観点に偏ってしまうことのないように気を付けながら、どの手法を組み合わせてマーケティングを進めていくか、今後の戦略を練っていきましょう。
ステップ⑥施策の実施と効果測定
ここまできたら、あとはターゲット層に合わせて施策を実行するだけです。なお施策内容の振り返りや改善のため、マーケティングの戦略を立案する際は必ず目標値も設定し、定期的に効果を検証するようにしてください。
製造業界での具体的なマーケティングの流れ・戦略は?
製造業においてマーケティングを行うための基本的なプロセスを理解できたら、各種の分析で得られた情報を具体的な戦略に落とし込んでいきましょう。そこで以下からは、製造業のようなBtoB事業のマーケティングに用いられることの多い戦略と流れについて紹介していきます。
まずは顧客ニーズの把握
はじめに、顧客層の分類・ターゲットの明確化から得た情報をもとに、自社の顧客である「商品の購入者・購入の決裁者・使用者」の三者それぞれ視点から、ニーズを把握していきます。
なお、この時点で自社製品の中から、各顧客のニーズを満たすもの(各顧客に売り込みたい・売れそうな製品)をピックアップしておいても良いでしょう。
リードジェネレーションで個人情報を獲得
リードとは、マーケティング用語で「将来的に自社の商品・製品・サービスを購入してくれるかもしれない見込み顧客」のこと。そしてリードジェネレーションとは、自社の製品に興味のある見込み顧客を見つけ、企業名や連絡先等の個人情報の獲得を目指すことを言います。
リードジェネレーションでは、施策を通してどれだけ多くの見込み客と接点を持てるか、顧客となり得る担当者の連絡先を獲得できるかが重要になってきます。具体的な手法としては、Webサイトの資料請求フォームの活用やイベント、展示会出展等が挙げられるでしょう。
リードナーチャリングでコミュニケーション
獲得した個人情報をもとに、セミナーやメールマガジン、記事や動画等を通して自社の情報を届け、見込み顧客とコミュニケーションを取るのがリードナーチャリングの段階です。
継続的にコミュニケーションを取り、見込み顧客との信頼関係を築いていくことで「何かあった時に自社、そして自社製品を選んでもらえる可能性」を少しずつ高めていきましょう。
リードクオリフィケーションでホットリードを見極め
リードクオリフィケーションでは、見込み客の中からホットリード、つまり「自社製品を購入してくれる可能性が高い見込み客」を見極めます。具体的には過去の行動や企業規模、予算、ニーズが自社とマッチするか等の情報をもとに見込み客を順位付けして、商談へつなげます。
新規顧客との商談へ
リードクオリフィケーションまでの工程を経て、特に自社の新規顧客となってくれる可能性の高い見込み顧客が見えてきたら、社内でしっかりと顧客情報を共有した上で商談を行います。
ここまでのコミュニケーションをもとに、自社製品に興味を持ったきっかけや需要のありそうな製品、購入意欲等の顧客情報を細かく共有しておけば、スムーズに商談が進むはずです。
製造業で有効!おすすめマーケティング施策8選
ここからは、製造業で有効な8つのマーケティング施策について、オフライン・オンラインに分けて計8つ紹介していきます。マーケティング戦略を練る際の参考として、ぜひご覧ください。
オフラインでのマーケティング戦略
まず、オフラインのマーケティング施策としては、展示会等のリアルイベントへの出展やセミナーの開催の他、ホワイトペーパーやカタログの制作、テレマーケティングがおすすめです。
展示会、セミナー等のイベントは、出展や開催に一定の時間的・金銭的コストが発生しますが、見込み顧客と直接話をしたり、その場で商談が成立する可能性があるのが特徴です。
対して、資料形式でわかりやすく自社や自社製品の強みを紹介するホワイトペーパーやカタログを配布することも、見込み顧客との接点作りや、新規顧客の獲得に大いに役立つでしょう。
なおセミナーの開催、カタログの配布に関しては、近年ウェビナーやデータ配布によるデジタル化も進んでいるため、オンライン施策として採用しても良いかもしれません。またテレマーケティングを行う際にも、1件ずつ手あたり次第に電話をかけるよりも、別の施策によって得たリストをもとに購入確度の高い担当者へアプローチする方が、効率よく行えるでしょう。
オンラインでのマーケティング戦略
オンラインのマーケティング施策のうち、まず製造業の方におすすめしたいのが各種Web広告です。なおWeb広告のうち、特におすすめの広告の種類・特徴については以下の一覧表にまとめていますので、ご確認ください。
リスティング広告 | 検索連動型広告とも呼ばれる。ユーザーがGoogle等で検索したキーワードに対して広告を表示するため、製造業や自社製品に興味がある人を狙って広告を出せるのが特徴。 なお、クリックされることで広告費が発生するシステムであるため、掲載自体は無料。 |
リターゲティング広告 | 追跡型広告とも呼ばれる。サイトを訪問したユーザーを「自社や自社製品に興味のある人」と仮定し、バナー広告を表示する。ただし、広告出稿には自社サイトが存在することが前提となるため、注意が必要。 なお料金は、一定回数表示されるごとに料金が発生する「インプレッション型」と、リスティング広告と同様にクリックごとに料金が発生する「クリック課金型」の2種類ある。 |
ポータルサイト等への広告出稿 | 技術系のWebメディア、製造業に関する情報を扱うサイト等に広告を出稿する方法。掲載そのものに費用がかかるケースが多いが、具体的なシステムや費用はサイトにより異なるため、都度確認する必要がある。 |
また、取り扱い製品に特化したメディアを自社サイトで運用するコンテンツマーケティングも、製造業において有効な手法です。その製品を作る企業だからこその正確性、独自性のある情報を発信できれば、サイトユーザーのファン化、購買行動の促進に大いに役立つでしょう。
関連記事:オウンドメディアの作り方とは?設計から運用までの流れを解説
対してFacebookやX(旧Twitter)、Instagram、TikTok等を使ったSNSマーケティングは、まだ見込み顧客になる前の潜在顧客との接点作りに効果的です。継続的に情報発信できればブランディングの強化や、これまで接点がなかった企業とつながるきっかけになるかもしれません。
なお、展示会等のオフラインイベントや、カタログ等のダウンロード時に獲得した顧客情報をもとに自社情報を配信するメールマーケティングもおすすめです。1通あたり数円ほどのコストで、各顧客に対して適切なタイミング・内容で自社の情報を届けられます。
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